【具体例付】中小企業投資促進税制の対象となるソフトウェアの範囲

中小企業投資促進税制 ソフトウェア 対象 法人税

中小企業投資促進税制の適用対象となるソフトウェアには、どのようなものがあるの?

こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回は、こんな疑問にお答えします。

当記事では対象となるソフトウェアの金額要件等はもちろん、具体例も列挙して対象となるソフトウェアの範囲を解説しています。

また、制度の適用対象法人や申告書への添付資料等その他の要件もわかりやすく解説していますよ。

■この記事を書いた人
・20代税理士
・世界4大税理士法人勤務
・税金やお金に係るお得な情報を発信

中小企業投資促進税制の対象となるソフトウェア

対象となるソフトウェア

中小企業投資促進税制の適用対象となるソフトウェアは下記のとおりです。
・一のソフトウェアの取得価額が70万円以上
・当該事業年度に取得したソフトウェアの取得価額の合計金額が70万円以上

一つのソフトウェアの購入金額が70万円未満でも、購入したソフトウェアの合計取得価額が70万円以上であれば対象となります。

ただし、下記のソフトウェアは適用対象資産から除かれますのでご注意ください。
販売用又は研究用のソフトウェア
下記ソフトウェアの内、国際電気標準会議等の規格15408の認証を受けていないもの
・サーバー用のオペレーティングシステム
・サーバー用仮想化ソフトウェア
・データベース管理ソフトウェア
・連携ソフトウェア
・不正アクセス防御ソフトウェア

自社利用ではなく、販売用や研究用のソフトウェアは対象外ということですね。

もなた
もなた

そうですね。あとは②に挙げた5種のソフトウェアは15408の認証がなければ対象外です。反対に認証を受けていれば②も対象になります

購入したものが対象外のソフトウェアか、規格15408の認証を受けているかどうかは下記方法で確認できるでしょう。

・購入先のベンダーに確認する
・購入ソフトウェア名でネット検索する
・サイト「独立行政法人:中小企業投資促進税制における認証製品リスト」で規格15408の認証を受けたソフトウェアのリストが公開されているので参照する
 
もなた
もなた

認証が要件となっているのは、②に挙げた5種のソフトウェアだけです。その他のソフトウェアは認証がなくても対象ですよ。

対象となるソフトウェアの具体例

対象となるソフトウェアの具体例は下記のとおりです。

業務用に使用されるワープロソフト・表計算ソフト・経理ソフト・給与ソフトの他にも、イラストソフト・画像ソフト・CADソフト等
中小企業庁:中小企業税制48問48答

上記に記載されているものはあくまで一例です。記載がなくても金額要件等を満たせば対象となります。

また、過去の中小企業投資促進税制のパンフレットには下記文言の記載がありました。

自社利用ソフトウェアとして無形固定資産に計上されるものは原則として対象」(平成22年度版のパンフレット)

最新のパンフレットには上記記載はありませんが、適用対象資産の考え方は同じです。自社利用のソフトウェアであれば原則として対象になると考えていいでしょう。


少額減価償却資産をあえて資産計上し税額控除を適用する

対象となるソフトウェアの条文上の記載内容も確認しておきましょう。

三 ソフトウエア 一のソフトウエアの取得価額が70万円以上のもの(当該中小企業者等が当該事業年度(法第42条の6第1項に規定する指定期間の末日以前に開始し、かつ、当該末日後に終了する事業年度にあつては、当該事業年度開始の日から当該末日までの期間に限る。)において、取得又は製作をして国内にある当該中小企業者等の営む同項に規定する指定事業の用に供した同項第2号に掲げるソフトウエア法人税法施行令第133条又は第133条の2の規定の適用を受けるものを除く。の取得価額の合計額が70万円以上である場合の当該ソフトウエアを含む。)
租税特別措置法施行令 第27条の6 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除

要件はこれまで確認したとおりですが、「法人税法施行令第133条又は第133条の2の規定の適用を受けるものを除く。」と記載があります。

これは、10万円未満の資産及び20万円未満の一括償却資産の特例を指します。

通常であれば、10万円未満又は20万円未満の資産を取得した場合には上記規定を適用しますが、中小企業投資促進税制の適用を考える上ではあえて資産計上する方法もあります。

これまで確認したように、ソフトウェアの金額要件は取得価額の合計額が70万円以上であることです。

10万円未満又は20万円未満の資産をあえて資産計上することで70万円を超えるようであれば、あえて資産計上をして税額控除を適用することで節税になります。

一方で、資本金が3千万円超で特別償却のみ適用可能な場合はあえて資産計上をする必要はありません。特別償却は償却を早める制度ですので、それであれば全額損金又は3年で償却した方が有利でしょう。



中小企業投資促進税制 その他の要件

中小企業投資促進税制の対象となるソフトウェアの範囲は前章までで確認しました。

ここからは、制度適用のためのその他の要件も確認しておきましょう。

要件1:適用対象法人

この制度の適用対象法人は、青色申告書を提出する中小企業者です。特別償却と税額控除で対象となる中小企業者の範囲が異なります。

特別償却の場合

特別償却の適用対象となる中小企業者は、資本金額が1億円以下で、次の要件を満たす法人です。
・発行済株式等の2分の1以上を同一の大規模法人(資本金1億円超)に所有されていない
・発行済株式等の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されていない

もなた
もなた

資本金額が1億円以下で、大法人に支配されていなけば対象ということですね。

税額控除

税額控除の適用対象法人は、特別償却に掲げる中小企業者のうち資本金が3千円以下の法人です。

資本金が3千万円超であれば、税額控除は適用できません。

適用対象法人のまとめ

特別償却と税額控除の適用対象法人をまとめると下記のとおりです。

資本金特別償却特別控除
3千万円以下
3千万円超~1億円以下×
1億円超××

*個人事業主の方は、常時使用する従業員数が1,000人以下であれば対象です。

要件2:指定事業の用

2つ目の要件は、取得した資産を次に掲げる指定事業の用に供することです。

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業にあっては、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限ります。)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、情報通信業、損害保険代理業、不動産業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)およびサービス業(他に分類されないもの)
(注)娯楽業、性風俗関連特殊事業は対象になりません。

購入資産を上記に記載がある事業の用に供すれば要件を満たします。

日本標準産業分類を基準として判定

指定事業に該当するかどうかは、日本標準産業分類を基準として判定することとされています。

法人の営む事業が指定事業に該当するかどうかは、おおむね日本標準産業分類(総務省)の分類を基準として判定する。
(注)1 措置法令第27条の6第5項の「鉱業」については、日本標準産業分類の「大分類C鉱業,採石業,砂利採取業」に分類する事業が該当する。
2 措置法規則第20条の3第5項第12号に掲げる「サービス業」については、日本標準産業分類の「大分類G情報通信業」(通信業を除く)、「小分類693駐車場業」、「中分類70物品賃貸業」、「大分類L学術研究、専門・技術サービス業」、「中分類75宿泊業」、「中分類78洗濯・理容・美容・浴場業」、「中分類79その他の生活関連サービス業」(旅行業を除く。)、「大分類O教育、学習支援業」、「大分類P医療、福祉」、「中分類87協同組合(他に分類されないもの)」及び「大分類Rサービス業(他に分類されないもの)」に分類する事業が該当する。
42条の6の5:事業の判定

指定事業は主たる事業である必要はない

指定事業は、法人の主たる事業である必要はありません。

法人の営む事業が指定事業の用に係る事業(以下「指定事業」という。)に該当するかどうかは、当該法人が主たる事業としてその事業を営んでいるかどうかを問わないことに留意する。
42条の6の4:主たる事業でない場合の適用

もなた
もなた

法人の主たる事業が指定事業に該当しなくても、主たる事業とは別に指定事業を営んでおり、取得資産をその指定事業の用に供すれば要件を満たします。

2以上の事業に供している場合

取得した資産を2以上の事業の用に供している場合、取得価額の全額を指定事業の用に供したものとして制度を適用することができます。

指定事業とその他の事業とを営む法人が、その取得等をした特定機械装置等をそれぞれの事業に共通して使用している場合には、その全部を指定事業の用に供したものとして措置法第42条の6の規定を適用する。
措置法42の6-7

要件3:新品の資産

3つ目の要件は、購入資産は新品である必要があります。

中古資産や資本的支出の場合には制度の適用ができませんのでご注意ください。資本的支出の考え方についてはこちらの記事で解説しています。

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要件4:添付別表

4つ目の要件は、申告書への別表の添付です。

特別償却と税額控除で添付する書類が異なります。

特別償却の場合

下記3点の別表の添付が必要です。
・特定機械装置等の償却限度額の計算に関する明細書として別表16-1又は16-2
・特別償却等の償却限度額の計算に関する付表
・適用額明細書

特別控除の場合

下記2点の別表の添付が必要です。
・別表6-17:中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
・適用額明細書

別表に関しては、国税庁のこちらのサイト「令和5年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)」にまとめられていますのでご参照ください。

個人事業主の場合

個人事業主の場合は下記のとおりです。
・特別償却:青色申告決算書の「減価償却の計算」の「㋬割増(特別)償却費」の欄に特別償却の額を、「摘要」の欄に特例名(措法 10 条の3)を記入し、特別償却に関する明細書を確定申告書に添付
・税額控除:明細書を確定申告書に添付

まとめ

今回は、中小企業投資促進税制の対象となるソフトウェアの範囲を具体例付きで解説しました。

金額要件としては、取得価額の合計金額が70万円以上である必要があります。

対象となるソフトウェアの具体例としては下記のとおりです。

業務用に使用されるワープロソフト・表計算ソフト・経理ソフト・給与ソフトの他にも、イラストソフト・画像ソフト・CADソフト等

制度が適用できる場合には、忘れずに適用し税制上の優遇を受けましょう。


下記記事では取得価額の考え方である「一単位当たりの考え方」を解説していますので合わせご確認ください。

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