【税理士解説】個別評価で債権金額の50%等貸倒引当金の設定が可能です

貸倒引当金の個別評価 法人税

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・貸倒引当金を債権金額の50%相当額引当可能と聞いたけど本当?
・どういった場合に個別評価できるの?

こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回はこんな疑問にお答えしていきます。

貸倒引当金を個別評価で設定できる場合は3パターンあります。
➀弁済猶予があった場合
②実質的に回収見込みがない場合
③更生手続開始の申立て等があった場合 ←50%基準

上記3パターンはどんな場合か、またいくらまで貸倒引当金を設定できるのか確認していきましょう。

□この記事でわかること
・個別評価できる場合
・個別評価による貸倒引当金繰入可能額

この記事を書いた人

・20代税理士
・世界4大税理士法人勤務
・税金やお金に係るお得な情報を発信中

貸倒引当金の個別評価

貸倒引当金の計上方法としては、「個別評価」と「一括評価」があります。

個別評価は、債権それぞれの状況を鑑みて回収見込のない不良債権に対して貸倒引当金を設定する方法です。

一方で一括評価は、債権が不良債権かどうかに関係なく一定の計算方法を基に貸倒引当金を設定します。

個別評価により貸倒引当金の計上ができるのは、次の3パターンです。

・弁済猶予があった場合
・取り立て見込みがない場合
・50%基準に該当する場合

それぞれどんな場合か確認していきましょう。

弁済猶予があった場合

一定の事実

1つ目の繰入事由は、債務者に「弁済猶予」の事実があった場合です。

次のような一定の事実が生じ債権の弁済が猶予された場合に適用することができます。

□一定の事実
イ 更生計画認可の決定
ロ 再生計画認可の決定
ハ 特別清算に係る協定の認可の決定
ニ 上記に準ずる事由

法第52条第1項(貸倒引当金)に規定する政令で定める事実は、次の各号に掲げる事実とし、同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、当該各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 法第52条第1項の内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権(同項に規定する金銭債権をいう。以下第6項までにおいて同じ。)に係る債務者について生じた次に掲げる事由に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済されること当該金銭債権の額のうち当該事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなつている金額以外の金額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済(省略)の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)
イ 更生計画認可の決定
ロ 再生計画認可の決定
ハ 特別清算に係る協定の認可の決定
ニ イからハまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由
法人税法施行令 第96条 貸倒引当金勘定への繰入限度額

「イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由」は、法人税法施工規則25条の2に規定されています。

令第96条第1項第1号ニ(貸倒引当金勘定への繰入限度額)に規定する財務省令で定める事由は、法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものとする。
一 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
二 行政機関、金融機関その他第三者のあつせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が前号に準ずるもの
法人税法施行規則 第25条の2 更生計画認可の決定等に準ずる事由

繰入限度額

「弁済猶予」による繰入額は次のとおりです。

繰入額=債権全額-(5年以内の弁済予定額-担保額-債権切捨額(基通9-6-1))

取り立て見込みがない場合

繰入事由

2つ目の繰入事由は、「債務超過等により取立見込がない」場合です。

法的ではなく事実認定による繰入となります。

二 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、当該金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められること(当該金銭債権につき前号に掲げる事実が生じている場合を除く。)当該一部の金額に相当する金額
法人税法施行令 第96条第2項 貸倒引当金勘定への繰入限度額

「相当期間」は、おおむね1年以上とされています(基通11-2-6)。

繰入額

当規定の適用にあたっては、債権回収不能と考えられる「一部の金額に相当する金額」の算定がポイントです。

算定は次のように行います。

繰入額=当該債権全額-(担保額-推定清算配当見込額-キャッシュフローからの回収見込額)

債務者が事業継続中の場合には、「推定清算配当見込額」の算定が必要であるため債務者の決算報告書を入手しましょう。

資産は簿価ではなく時価で評価し直しますが、負債については簿外の借入金等がなければ原則として簿価額の修正は不要でしょう。

50%基準による場合

繰入事由

3つ目の繰入事由は、「形式基準」による場合です。

三 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する金銭債権に係る債務者につき次に掲げる事由が生じていること(省略)当該金銭債権の額(当該金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の100分の50に相当する金額
イ 更生手続開始の申立て
ロ 再生手続開始の申立て
ハ 破産手続開始の申立て
ニ 特別清算開始の申立て
ホ イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由

1つの目の繰入事由と似ていますが、1つ目は「~決定」であるのに対し、当該3つ目は「~申立て」です。

つまり、3つ目の方が法的手続きのより初期段階での引当金の設定が可能です。

また、「ホ イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由」とは「手形交換所による取引停止処分」が該当すると法人税法施行規則25条の3で規定されています。

繰入額

当規定による繰入額は次のとおりです。

繰入額=(当該債権全額-担保額-実質的に債権とみられない金額)×50%

「実質的に債権とみられない金額」は基通11-2-9で例示されていますが、同一債務者に対して債権と債務がある場合には相殺します。

ただし、支払手形は実質的に債権とみられない金額に該当しないので注意しましょう(一括評価の場合には対象)。

書類の保存を忘れずに

個別評価による貸倒引当金の設定をする場合には、一定の事実が生じていることを証明する書類の保存が必要です。

2 内国法人の有する金銭債権について前項各号に掲げる事実が生じている場合においても、当該事実が生じていることを証する書類その他の財務省令で定める書類の保存がされていないときは、当該金銭債権に係る同項の規定の適用については、当該事実は、生じていないものとみなす。
法人税法施行令 第96条 貸倒引当金勘定への繰入限度額

法人税法施行規則25条の4で、保存書類について補足されています。

令第96条第2項(貸倒引当金勘定への繰入限度額)に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
一 令第96条第1項各号に掲げる事実が生じていることを証する書類
二 担保権の実行、保証債務の履行その他により取立て又は弁済の見込みがあると認められる部分の金額がある場合には、その金額を明らかにする書類
法人税法施行規則 第25条の4 保存書類

まとめ

今回は、貸倒引当金の個別評価について解説しました。

個別評価金銭債権は金額が大きくなることが多く、一時的に多額の損金を計上することが可能です。

各パターンの繰入要件をよく確認し、個別評価が可能なのか判断していきましょう。

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