・出張手当で節税になるって本当?
・出張旅費規程の作り方がわからない。
こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回は、こんな疑問にお答えします。
結論からお伝えすると、出張手当は超優良な節税策です。
出張手当の導入により、手当を支給する法人や一人社長が節税になることはもちろん、手当を受給する従業員側でも節税になります。
つまり、出張手当は支給側・受給側の両面で節税となります。
出張手当の要件は、出張旅費規程の作成と手当の支給額が適正額であることです。
本記事では、出張旅費規程の作成方法や作成時の注意点、適正な支給額について具体的な目安金額をお伝えしています。
■この記事を書いた人
・20代税理士
・世界4大税理士法人勤務
・税金やお金に係るお得な情報を発信
出張旅費規程で一人社長も法人も節税できる理由
従業員に対する手当は原則的には給与課税となりますが、出張旅費特例を利用すると所得税が非課税となるため節税につながります。
出張手当とは
出張手当は、出張中にかかる食事や電話代等の諸経費を補助するために支払われる手当です。
出張時に発生する交通費や宿泊料は出張手当とは別に実費精算します。
出張手当の節税効果
出張手当は、支払う会社側ともらう従業員側の両方で節税になります。
それぞれの立場からどのように節税になるか確認しましょう。
会社(支払う側)
会社が従業員に出張手当を支給した場合には、法人税法上損金にすることができます。また、消費税は仕入税額控除の対象です。
仕入税額控除が増えると、消費税の納税額が減ります。
よって、支払う会社側では法人税・消費税の節税になります。
ただし、海外出張のために支給する旅費、宿泊費及び日当等は、原則として課税仕入れに係る支払対価に該当しないので注意しましょう(「基通 11-2-1 出張旅費、宿泊費、日当等」参照)。
従業員(もらう側)
出張手当は、一定の要件を満たす場合には給与課税されない非課税所得になります。
法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。
(1)その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2)その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。
所得税法基本通達9-3:非課税とされる旅費の範囲
つまり、出張手当が非課税になるためには下記2要件を満たす必要があります。
□出張旅費特例の要件2つ
➀出張旅費規程を作成する
②支給額が適正額である
2要件に関しては、こちらで詳しく解説しています。
所得税非課税になると、住民税や社会保険料も非課税となります。
つまり、もらう従業員側では所得税・住民税・社会保険料のトリプルで節約になります。
節税効果のまとめ
会社側・従業員側の節税効果をまとめると下記のとおりです。
会社側 | 従業員側 | |
出張日当で 非課税となるもの | 法人税・消費税 | 所得税・住民税・社会保険料 |
出張手当は、みんながお得になる制度なんですね。
そうなんです。出張手当は会社にとっても従業員にとっても優良な節税策です。
実費精算ではだめ?
出張手当を支給しなくても、実費精算じゃだめなんですか?
出張でかかった交通費や宿泊費は、実費精算が可能です。
しかし、出張中の食事代や通話代そのた諸経費を実費精算して損金とすることは難しいです。
業務としての部分とプライベートとしての部分の区別があいまいであり、必ずしも業務の経費とはいえないからです。
また、出張手当でもらった金額が余れば、従業員は給与課税されずに手元にお金を残すことができます。
実費精算ではなく出張手当とすることで法人の損金にすることができ、もらった個人にはお金が残ることからやはり出張手当として支給した方がお得となります。
出張手当の要件
出張手当で節税するためには、2要件を満たす必要がありました。
それぞれの要件をより詳しく確認しましょう。
要件1:出張旅費規程を作成する
出張手当の支給額は、「適正なバランスが保たれた基準」によって計算されている必要があります。そのため、支給額の基準として「出張旅費規程」を作成しましょう。
出張旅費規程の作成方法は、こちらで詳しく解説しています。
また、出張手当は全従業員が受給できるように規定しておく必要があります。
役員だけ受給できるという規定はNGです。
要件2:支給額が同業他社と比較して適正な金額である
出張手当の支給額は、同業他社と比較して適正な金額である必要があります。
適正な金額といわれても、、、。実際にいくらにすればいいんですか?
税法でいくらが適正な金額か規定されているわけではありません。
統計情報等を参考に判断することになります。
出張手当の相場に関しては、こちらで解説してます。
□出張手当の要件2つ
➀出張旅費規程を作成する
②支給額が適正額である
出張手当が税務調査で否認されると
前章の2要件を満たさず、出張手当が税務調査で否認されると下記のようなリスクがあります。
□税務調査で否認されると、、、
・給与課税による源泉所得税の追加徴収
・上記納付遅延による延滞税等の支払
・受給者が役員の場合は手当が損金不算入
ただ、これまで税務調査で否認された事例は少なく支給額に妥当性があれば出張手当が否認されるリスクは低いと考えています。
適正な支給額が税法上明確に規定されているわけではなく、税務署側でも否認しづらい面があるのでしょう。
出張手当が適用できるのはだれ?
出張手当による節税は、法人や一人社長が活用できます。
しかし、個人事業主の場合には出張手当による節税は適用できません。これは、所得税法9条第1項から読み取れます。
次に掲げる所得については、所得税を課さない。
四 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの
所得税法9条第1項第4号:非課税所得
所得税が非課税となる対象者は「給与所得を有する者」です。
法人の役員や従業員、一人社長であれば法人から給与をもらうため給与所得が発生します。
しかし、個人事業主の場合は収入が事業所得や雑所得となるためそもそも給与所得が発生しません。
個人事業主が従業員を雇い、その従業員に出張日当を支給するということであれば従業員に関しては給与所得が発生するため適用可能です。
法人は、個人事業主よりも税制面で有利なことが多いです。
法人成りには慎重な判断が必要ですが得られるメリットが大きいため、事業規模が大きくなったら法人成りを検討しましょう。
「0円創業くん」というサービスは、法人成りに係る手続きを代行してくれるため法人成りを考えているフリーランスの方にはおすすめです。
・出張手当が適用可能:法人や一人社長
・出張手当の適用不可:個人事業主
出張旅費規定の作成
テンプレート
出張旅費規程について、法律上定められているフォーマットはありません。
ネットにテンプレートが多数掲載されていますので、お好みのテンプレートを使用してword等で作成してください。
参考として、マネーフォワードのこちらサイト「テンプレート付き – 出張旅費規程とは?作成目的や記載項目を解説!」でテンプレートが掲載されています。
支給額の相場
出張手当の適正額に関しても、税法上で規定されていません。
そのため、適正な金額は統計情報や同業他社へのヒアリング等で判断していきます。
統計情報の参考として、人事労務分野における調査等を行っている産労総合研究所のこちらの調べ「国内・海外出張旅費に関する調査」をご紹介します。
2019年度の出張旅費に関する調査結果です。産労総合研究所の会員企業および上場企業から任意に抽出した約3,000社にアンケートを行い、171社か回答を得ています。
国内日帰り出張
国内日帰り出張の場合、出張手当の平均支給額は下記のとおりです。
役職区分 | 日帰り出張における 日当の平均支給額(円) |
社長 | 4,458 |
専務 | 3,781 |
常務 | 3,716 |
取締役 | 3,613 |
部長 | 2,666 |
課長 | 2,479 |
係長 | 2,224 |
一般社員 | 2,094 |
出典:産労総合研究所:2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査
結果をみると、社長の国内日帰り出張で日当5,000円程度であれば相場の範囲内と考えられます。
国内宿泊出張
続いて、国内宿泊出張の場合、日当平均支給額は下記のとおりです。
役職区分 | 宿泊出張における 日当の平均支給額(円) |
社長 | 14,095 |
専務 | 12,568 |
常務 | 12,722 |
取締役 | 11,838 |
部長 | 9,835 |
課長 | 9,345 |
係長 | 8,836 |
一般社員 | 8,605 |
出典:産労総合研究所:2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査
結果をみると、社長の国内宿泊出張で日当15,000円程度であれば相場の範囲内と考えられます。
海外日帰り出張
海外日帰り出張の場合、日当平均支給額は下記のとおりです。
韓国 | 中国 | 東南 アジア | 中東 | 欧州 | 北米 | |
役員 | 6,476 | 6,411 | 6,472 | 6,833 | 6,812 | 6,855 |
部長 | 5,243 | 5,185 | 5,226 | 5,468 | 5,552 | 5,593 |
課長 | 4,940 | 4,888 | 4,932 | 5,165 | 5,273 | 5,308 |
係長 | 4,586 | 4,534 | 4,563 | 4,780 | 4,905 | 4,943 |
一般 社員 | 4,559 | 4,514 | 4,543 | 4,755 | 4,881 | 4,913 |
出典:産労総合研究所:2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査
出張旅費規程に海外出張を折り込む場合は、上記表を目安に地域ごとに基準額を定めるようにしましょう。
海外宿泊出張
海外宿泊出張の場合、日当平均支給額は下記のとおりです。
韓国 | 中国 | 東南 アジア | 中東 | 欧州 | 北米 | |
役員 | 15,585 | 15,541 | 15,516 | 16,724 | 18,428 | 18,551 |
部長 | 13,619 | 13,570 | 13,588 | 14,610 | 16,309 | 16,385 |
課長 | 12,837 | 12,822 | 12,833 | 13,767 | 15,359 | 15,435 |
係長 | 12,254 | 12,230 | 12,213 | 13,130 | 14,734 | 14,812 |
一般 社員 | 12,090 | 12,085 | 12,092 | 13,005 | 14,556 | 14,621 |
出典:産労総合研究所:2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査
出張旅費規程作成時の注意点
出張旅費規程の記載項目
出張旅費規程に記載すべき項目に決まりはありません。
「規定の対象者・出張の定義・日帰り又は宿泊等の区分ごとの支給基準額・出張費用精算の流れ」は記載しておきましょう。
出張旅費規程の対象者は全員に
出張手当の支給対象者は従業員全員である必要があります。
会社規模が大きいと、全ての従業員が対象となるため支払う金額も高額になり資金繰りが悪化するリスクがあります。
この点を踏まえると、出張手当による節税は中小法人又は一人社長のような小規模法人に有効な節税策といえるかもしれません。
支給金額は相場の範囲内で
出張手当の支給金額は相場の範囲内である必要があります。
相場に関しては、こちらで確認してください。
金額は、日帰りと宿泊の別、海外の場合にはエリア別に定めるようにしましょう。
格差を設けすぎない
役職ごとに格差を設けることは問題ありません。
しかし、役員だけ異常に支給額が高額であると税務調査で否認されるリスクがありますのでご注意ください。
支払は個人カードで
出張手当を支払う場合、出張に係る経費は個人のカードで支払うようにしましょう。
交通費等の実費精算や出張手当の支給は、あくまで個人が立て替えていることが前提です。
領収書は残す
出張時の領収書は残し、きちんと保管しておきましょう。
税務署に空出張と疑われたら大変ですからね。
税務署に説明できる書面を残しておくことは重要です。仮に、空出張と認定されると重加算税といった重い税金が課される可能性があります。
ただ、交通費等の一部の経費は領収書がもらえない場合があります。
領収書がもらえない場合には、次で解説する出張精算書に支払った金額をメモするようにしましょう。
出張報告書・出張精算書も作成する
出張をしたら、出張報告書及び出張精算書を作成するようにしましょう。
・出張報告書:出張の目的・出張先・出張期間等を記載
・出張精算書:出張にかかった交通費等を記載して精算
これら書類を作成することで、空出張ではないことを主張できます。
出張の際に受け取った領収書は出張精算書に添付し、領収書をもらえない交通費等はメモを残すようにしましょう。
こちらもネット上にテンプレートがたくさんありますので、お好みのテンプレートを活用して作成してください。
マネーフォワードのこちらのサイト「テンプレート付き – 出張旅費精算書の書き方や利用ケース」にも出張精算書のテンプレートがありますので参考にしてください。
出張手当とインボイス制度
出張旅費規程の作成方法はわかりました!
ところで出張手当のインボイスはどうすればいいでしょうか?従業員はインボイスが発行できないような、、、。
インボイスは必要ありませんよ。帳簿のみの保存で仕入税額控除ができるのご安心ください。
従業員の出張旅費、宿泊費、日当等については帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められています。インボイスは不要ということですね。
国税庁の「インボイス制度に係るQ&A」でも、このことは記載されています。
問 104 社員に支給する国内の出張旅費、宿泊費、日当等については、社員は適格請求書発行事業者ではないため、適格請求書の交付を受けることができませんが、仕入税額控除を行うことはできないのですか。
【答】
社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われます(基通11-2-1)。この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
なお、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる「その旅行に通常必要であると認められる部分」については、所得税基本通達9-3に基づき判定しますので、所得税が非課税となる範囲内で、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることになります。また、この場合の帳簿の記載事項については、問107をご参照ください。
参照:国税庁:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
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まとめ
今回は、出張手当による節税方法をご紹介しました。
出張手当は、支給する会社・受給する従業員の双方で節税となる優れた節税策です。
出張手当の適用にあたっては、出張旅費規程を作成し、支給額を適正額とすることで税務調査で否認されないようにしておきましょう。
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