防犯カメラの資産計上の単位は?減価償却資産の一単位当たりの考え方を税理士が解説

減価償却 一単位あたりの考え方 法人税

減価償却資産の取得価額算定時、一単位はどのように考えればいいの?

こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回は、こんな疑問にお答えします。

減価償却資産は取得価額によって次のように処理方法が異なります。
①10万円未満:損金算入
②10万円以上20万円未満:一括償却資産として3年で償却
③20万円上30万円未満(中小企業者の場合):少額減価償却資産として損金算入
④30万円以上:資産計上

取得価額が20万円未満・30万円未満であれば、償却が早くなるため有利です。

もなた
もなた

経費計上が早くなるということですね。

このように、取得価額によって処理方法が変わるためどこまでを1単位として判定するか」の考え方は重要です

■この記事を書いた人
・20代税理士
・世界4大税理士法人勤務経験有
・税金やお金に係るお得な情報を発信

1単位として取引される単位ごとに判定する

まずは、法人税基本通達7-1-11を確認してみましょう。

令第133条《少額の減価償却資産の取得価額の損金算入》又は令第133条の2《一括償却資産の損金算入》の規定を適用する場合において、取得価額が10万円未満又は20万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位、例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定し、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものについては一の工事等ごとに判定する。
法人税基本通達 7-1-11 少額の減価償却資産又は一括償却資産の取得価額の判定

基本は1個又は1組ずつ判定するが、単体では機能を発揮できないものは一の工事等ごとに判定してねとされています。

ここで大事なのは、基本は1単位として取引されるその単位ごとに判定することです。

そして、単体では機能を発揮できないものは、例外的に一の工事等ごとに判定するとされています。

この考え方は、「一単位当たり」の判断をするにあたって重要な考え方です

原則は、あくまで1単位として取引される単位ごと判定します

では、枕木や電柱等、単体で機能を発揮できないものとは何でしょうか。以下、基通7-1-11の解説ページです。

枕木、電柱等は、単に1本1本がその用をなすものではなく、枕木の場合には相当区間の線路設備を構成してその用をなすものであり、また、電柱の場合にも、相当距離の送電設備等を構成してその用をなすものである。したがって、本通達において、このような単体では機能を発揮できないものについては、一の工事等ごとに判定することが明らかにされている。
法人税基本通達逐条解説P616

単体で購入しても意味がない場合、使用目的に沿った使用ができない場合には、意味をなす単位、使えるようになる単位ごとに判定しましょうということです。

また、「単体で機能する単位」といっても次の2つの単位が考えられます。

〇単体で機能する単位とは?

➀純機能説:「資産としての機能」を発揮できる資産の単位で取得価額を判定する
②事業対応機能説:「事業としての機能」を発揮できる単位で取得価額を判定する

これについては、少額減価償却資産の判定単位が争われた裁判事例「NTTドコモ事件_東京地裁平成17年5月13日判決」で、「純機能説」で減価償却資産の取得価額を判断する考え方が採用されています。

セットで考える場合

単体では機能を発揮できない場合には機能を発揮する単位を「一単位当たり」とすることがわかりました。

もう一つ、セット単位で考える必要がある場合があります。基通7-1-11の解説ページで記載されているので確認しましょう。

なお、この「単体では機能を発揮できないもの」の延長線上の問題として、例えば、高級レストランのカーテン、役員会議室の調度品等のように、二以上の器具、備品が一定の色調、デザイン等により統一的にレイアウトされ、全体として一の空間を演出するように設置されるものも、同じく単体で少額資産かどうかを判断するのは適当ではなく、そのレイアウトされた一の空間ごとにその判断を行うことになるものと考えられる。
法人税基本通達逐条解説P616

上記説明をかみ砕くと、単体で機能が発揮できないもの以外にも、二以上の器具備品をセットで購入したような場合にはそのセット単位で判定してねと読み取れます。

応接セットは机とイスを合わせて1単位として判定しますが、これは上記考え方からきていると考えられます。

裁判例

以下、減価償却資産の一単位当たりの考え方に関して争われた裁判例もみてみましょう。

〇裁判の概要

・防犯用カメラを購入しカメラ、ディスプレイ等をそれぞれ1単位として取得価額を判定していた。

・国税庁見解:カメラ、ディスプレイ等は防犯用カメラとしての機能を発揮するためのセットであり、カメラ、ディスプレイ等を合わせて1単位を判定すべきと主張した。

結論は下記のとおりです。

・少額減価償却資産の制度は、それを耐用期間にわたり原価配分することにより期間損益の計算が適正化する必要があるほどの重要な金額ではなく、実務上減価償却資産として取り扱う実質的意味がないとの企業会計上の慣行に由来しているものであるから、(省略)、1品ごとの通常の取引価額により判定すれば足りるというべきである。そして、このことを法人税基本通達7-1-11は定めていると解される。
・少額資産であるかどうかは、物品については基本的に普通の一般取引において用いられる取引単位ごとに判定すべきこと、(省略)、単体では予定される機能を発揮できないと認められるものについては例外的に一の工事等毎ごとに判定するものとされていることが認められている。
Z254-9549「防犯用ビデオカメラの少額減価償却資産該当性と採用内定者事前研修懇親旅行」判示

セットで考えるのはあくまで例外的な考え方であり、カメラ、ディスプレイ等をそれぞれを1単位として取得価額を判定していいと判決されました。

国税庁の見解が覆される結果となったわけです。

「1単位」を考えるにあたり、この裁判は大きな意味を持つ裁判だったと考えます。

あくまで原則は、「通常1単位として取引されるその単位で考える」ということが改めて示されたからです。

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結論

それでは、まとめです。

〇「一単位当たりの考え方」
原則:通常1単位として取引されるその単位
例外①:単体では機能を発揮できないものについてはセット単位
例外②:セットで購入されたものはセット単位

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