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こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回は、合併の場合の適格組織再編の要件について確認していきます。
適格組織再編の要件
国際的競争力の強化を目的として、産業政策等の見地から望ましいと考えられる適格組織再編では、課税の繰り延べが認められています。
合併の場合、株式の保有割合に応じて次表の要件を満たすことが適格要件となっています。
保有割合のどの区分でも、対価として金銭等を交付する場合には非適格合併となります。これは、金銭の交付があるようであれば、経済的実態は資産負債の譲渡と考えられるためです。
要件 | 100% | 50%超 | 共同事業 |
対価 | 〇 | 〇 | 〇 |
従業者引継 | 〇 | 〇 | |
事業継続 | 〇 | 〇 | |
事業関連 | 〇 | ||
事業規模or特定役員 | 〇 | ||
株式継続保有 (支配株主がいる場合) | 〇 |
適格合併 次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人又は合併親法人(合併法人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係がある法人をいう。)のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産(当該株主等に対する剰余金の配当等(株式又は出資に係る剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいう。)として交付される金銭その他の資産、合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産及び合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等の総数又は総額の三分の二以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該合併法人以外の株主等に交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。
イ その合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が法人を設立する合併(以下この号において「新設合併」という。)である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)との間にいずれか一方の法人による完全支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該合併
ロ その合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)との間にいずれか一方の法人による支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該合併のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの
(1)当該合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務(当該合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務並びに当該合併後に行われる適格合併により当該被合併法人の当該合併前に行う主要な事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該適格合併に係る合併法人及び当該適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に従事することが見込まれていること。
(2) 当該合併に係る被合併法人の当該合併前に行う主要な事業が当該合併後に当該合併に係る合併法人(当該合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人並びに当該合併後に行われる適格合併により当該主要な事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該適格合併に係る合併法人及び当該適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。
ハ その合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)とが共同で事業を行うための合併として政令で定めるもの
法人税法第2条第12の8号:適格合併
共同事業要件
共同事業要件は詳細は次のとおりです。
保有割合が50%以下など資本関係がない法人同士の合併でも、次のすべての要件を満たすような共同で事業を行うための合併であれば、適格合併とすることができます。
大部分の従業者の引継ぎ | 被合併法人の合併直前の従業者のうち、 おおむね80%以上に相当する者が合併法人の 業務に従事することが見込まれていること |
主要な事業の引継ぎ | 被合併事業が合併法人において引き続き 行われることが見込まれていること |
事業の関連性 | 被合併事業と合併事業とが 相互に関連するものであること |
事業規模要件 or 経営参画要件 | 被合併事業と合併事業のそれぞれの売上金額、 従業者の数、資本金の額などがおおむね五倍を 超えないこと or 当該合併前の当該被合併法人の特定役員のいずれかと 当該合併法人の特定役員のいずれかとが当該合併後に 合併法人の特定役員となることが見込まれていること |
4 法第二条第十二号の八ハに規定する政令で定めるものは、同号イ又はロに該当する合併以外の合併(無対価合併にあつては、第二項第二号ロに掲げる関係があるもの又は当該無対価合併に係る被合併法人の全て若しくは合併法人が資本若しくは出資を有しない法人であるものに限る。)のうち、次に掲げる要件(当該合併の直前に当該合併に係る被合併法人の全てについて他の者との間に当該他の者による支配関係がない場合又は当該合併に係る合併法人が資本若しくは出資を有しない法人である場合には、第一号から第四号までに掲げる要件)の全てに該当するものとする。
一 合併に係る被合併法人の被合併事業(当該被合併法人の当該合併前に行う主要な事業のうちのいずれかの事業をいう。以下この項において同じ。)と当該合併に係る合併法人の合併事業(当該合併法人の当該合併前に行う事業のうちのいずれかの事業をいい、当該合併が新設合併である場合にあつては、他の被合併法人の被合併事業をいう。次号及び第四号において同じ。)とが相互に関連するものであること。
二 合併に係る被合併法人の被合併事業と当該合併に係る合併法人の合併事業(当該被合併事業と関連する事業に限る。)のそれぞれの売上金額、当該被合併事業と合併事業のそれぞれの従業者の数、当該被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね五倍を超えないこと又は当該合併前の当該被合併法人の特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。以下この条において同じ。)のいずれかと当該合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、他の被合併法人)の特定役員のいずれかとが当該合併後に当該合併に係る合併法人の特定役員となることが見込まれていること。
三 合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務(当該合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務並びに当該合併後に行われる適格合併により当該被合併法人の被合併事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該適格合併に係る合併法人及び当該適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に従事することが見込まれていること。
四 合併に係る被合併法人の被合併事業(当該合併に係る合併法人の合併事業と関連する事業に限る。)が当該合併後に当該合併に係る合併法人(当該合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人並びに当該合併後に行われる適格合併により当該被合併事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該適格合併に係る合併法人及び当該適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。
法人税法施行令第4条の3第4項:適格組織再編成における株式の保有関係等
みなし共同事業要件
みなし共同事業要件を満たすことで、繰越欠損金の引継ぎ制限の適用を防ぐことができます。
みなし共同事業要件に該当するためには、次の「①~③を全て満たす」or「①と④と満たす」必要があります。
実務的には、まず「①~③を全て満たす」かどうかを確認し、満たさない場合には「特定役員」要件を満たすか確認を行います。
要件 | 内容(法人税法施行令第112条第3項) |
①事業関連性 | 被合併事業と合併事業とが相互に関連するものであること |
②事業規模 | 被合併事業と合併事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、資本金の額などの 割合がおおむね五倍を超えないこと |
③規模継続 | ・被合併事業が最後に支配関係を有することとなつた時から当該適格合併の 直前の時まで継続して行われており、かつ、支配関係発生時と当該適格合併の 直前の時における当該被合併事業の規模の割合がおおむね二倍を超えないこと ・合併事業が最後に支配関係を有することとなつた時から当該適格合併の 直前の時まで継続して行われており、かつ、支配関係発生時と当該適格合併の 直前の時における当該合併事業の規模の割合がおおむね二倍を超えないこと |
④特定役員 | 被合併法人の特定役員である者のいずれかの者(最後に支配関係を有する こととなつた日前から役員であること)と当該合併法人の特定役員である者の いずれかの者とが当該適格合併の後に当該合併法人の特定役員となることが 見込まれていること |
事業規模要件
事業規模要件については、売上金額、従業者の数、資本金の額のいずれか一つでも5倍以下であれば要件を充足します。
特定役員
両社の役員が最低1名ずつ合併法人の役員に就任するようであれば、共同事業性が認められ、欠損金目的の組織再編ではないとして欠損金の引継ぎ制限はしないというものです。
要件を充足するために、被合併法人の役員を合併法人の役員として短期間就任させてから解任したとしても、経済的実態が伴っていなければ包括的租税回避防止規定により否認されるリスクが高いでしょう。
また、被合併法人の役員は、「最後に支配関係を有することとなつた日前から」被合併法人の役員であったことが求められています。
そのため、合併直前に合併法人の役員を被合併法人の役員に就任させ、合併後合併法人の役員に就任させたからといって、特定役員の要件を充足するものでもありません。
上記スキームとしては「ヤフー事件」が有名です。ヤフー事件については、下記記事で取り上げています。
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