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こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
事業承継を進めるうえで、「自社株を会社が買い取る」という選択肢が注目されています。
株主構成の調整や相続税対策において、効率的な手法であるものの、不適切な金額で自社株買いを行うと税務調査で指摘されるリスクがあります。
本記事では、自社株買いをする場合いくらで取引すべきなのか詳しく解説していきます。
自社株買いとは何か?
自社株買いとは、文字どおり、会社が自ら発行した株式を買い戻す行為です。
この行為は、2001年の商法改正および2006年の会社法の施行により、制限が大幅に緩和され、現在では広く活用されています。
特に事業承継においては、株主の構成を見直し、経営の安定を図るための手法として知られています。
自社株の買取金額はいくらが適正か
自社株買いをする場合、「買い取り時の時価」で取引する必要がありますが、税法上の「時価」はとても複雑です。
法人税・所得税・相続税の時価についてはそれぞれ下記通達を参照します。
原則的取り扱い | 具体的取り扱い | |
法人税基本通達 | 9-1-13 | 9-1-14 |
所得税基本通達 | 23~35共-9 | 59-6 |
相続税基本通達 | 総則 | 178~189-7 |
また、どの時価を参照すべきかは売買当事者それぞれの状況により異なります。
売主⇒買主 | 売主 | 買主 |
個人⇒個人 | 相続税評価額 | 相続税評価額 |
個人⇒法人 | 所得税評価額 | 法人税評価額 |
法人⇒個人 | 法人税評価額 | 所得税評価額 |
法人⇒法人 | 法人税評価額 | 法人税評価額 |
みなし譲渡課税
2分の1以上の金額で譲渡
所得税法では、「みなし譲渡課税」という制度があります。
資産の譲渡の時における価額の2分の1未満の金額で譲渡した場合、その譲渡時の価額によって譲渡があったものとみなされます。
「2分の1」という基準については、逋脱(ほだつ)の防止という考え方の下,著しく低い価額の常識的な判断基準としてが定められたとされています。
「譲渡の時における価額」は、法人税法基本通達9-1-13を参考にします。
市場有価証券等以外の株式につき法第33条第2項((資産の評価損の損金不算入等))の規定を適用する場合の当該株式の価額は、次の区分に応じ、次による。
(1) 売買実例のあるもの 当該事業年度終了の日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額
(2) 公開途上にある株式(金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式)で、当該株式の上場に際して株式の公募又は売出し(以下9―1―13において「公募等」という。)が行われるもの((1)に該当するものを除く。) 金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額
(3) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((2)に該当するものを除く。) 当該価額に比準して推定した価額
(4) (1)から(3)までに該当しないもの 当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額
法人税法基本通達9-1-13:市場有価証券等以外の株式の価額
しかし、「売買実例のあるもの」は実務上ほとんど存在しませんし、「公開途上にある株式」もレアケースです。
「類似する他の法人」のデータを得ることも難しいため、実務上は(4)の通達9-1-14「純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」で評価することがほとんどです。
法人税基本通達9-1-14については、次の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。
所得税法59条:贈与等の場合の譲渡所得等の特例
法第59条第1項第2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は,同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とする。
所得税法施行令第169条:時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲
法第59条第1項第2号に規定する「対価」には,法第36条第1項⦅収入金額⦆に規定する金銭以外の物又は権利その他経済的な利益も含まれるから,贈与名義による法人に対する資産の移転であっても,当該移転に伴い債務を引受けさせることなどによる経済的な利益による収入がある場合には,当該移転については,法第59条第1項第1号の規定の適用はなく,当該経済的な利益による収入に基づいて同項第2号の規定の適用の有無を判定する。
所得税法基本通達59-2:低額譲渡
同族会社の場合
会社が同族会社に該当する場合は、譲渡価額についてさらに注意が必要です。
同族会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合には、その株主は当該財産の譲渡をした者から贈与によって取得したものとして取り扱われます。
同族会社(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第10号に規定する同族会社をいう。以下同じ。)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。
(1)会社に対し無償で財産の提供があつた場合 当該財産を提供した者
(2)時価より著しく低い価額で現物出資があつた場合 当該現物出資をした者
(3)対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があつた場合 当該債務を免除、引受け又は弁済をした者
(4)会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該財産の譲渡をした者
相続税法基本通達9-2:株式又は出資の価額が増加した場合
持株会社を介して買い取る場合
持株会社を設立して、自社株を買い取る方法もあります。
持株会社のように「同族株主」以外の株主、または同族株主がいる会社でも支配権のない少数株主への譲渡であれば配当還元価額での譲渡が可能です。
配当還元価額は、通常他の評価方法よりも評価額が非常に安くなるのがポイントです。
〇持株会社で買い取るメリット
・持株会社は同族株主ではないため、配当還元価額での買取が可能
・持株会に5%以上の株式を持たせればグループ法人税制の適用を回避できる
法第二条第十二号の七の六に規定する政令で定める関係は、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等(発行済株式(自己が有する自己の株式を除く。)の総数のうちに次に掲げる株式の数を合計した数の占める割合が百分の五に満たない場合の当該株式を除く。以下この項において同じ。)の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(以下この項において「直接完全支配関係」という。)とする。この場合において、当該一の者及びこれとの間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人又は当該一の者との間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の全部を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなす。
一 当該法人の使用人が組合員となつている民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項(組合契約)に規定する組合契約(当該法人の発行する株式を取得することを主たる目的とするものに限る。)による組合(組合員となる者が当該使用人に限られているものに限る。)の当該主たる目的に従つて取得された当該法人の株式
法人税法施行令第4条の2②一:支配関係及び完全支配関係
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まとめ
自社株を会社が買い取ることは、事業承継のスムーズな実現に大きく貢献する手法です。
自社株買いを行う際は税務上の適正価額を理解し、慎重に進めるようにしましょう。
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