【税理士解説】仮想通貨で利益発生!法人化のタイミングは?

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こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回はこんな疑問にお答えしていきます。

この記事で解決できること

・法人成りを検討すべき所得金額の目安
・法人化のメリット・デメリット

それでは、さっそく確認していきましょう。

この記事の信頼性

この記事を書いている私は、世界4大税理士法人に勤務しています。現職の前には2つの中小規模の税理士法人で働いていました。私も実際に仮想通貨取引をしており、これまでに仕事で得た知識を基に解説しています。

仮想通貨で利益発生!法人化のタイミングは?

仮想通貨の節税目的で法人化を考える場合に、目安となる所得金額について解説します。

法人税も所得税も所得金額に税率をかけますので、法人成りを検討する際は収入金額ではなく所得金額で検討するようにしましょう。

もなた
もなた

所得金額は、仮想通貨売却による収入から必要経費を差し引いた後の金額ですよ。

今回は、法人税率及び所得税率を参考に仮想通貨の所得がいくらになったら法人成りを検討すべきか確認します。

本来、法人成りを検討する際は法人税以外にも住民税・事業税・消費税、社会保険料、個人の所得構成等の他の要素も考慮して検討すべきです。あくまで目安金額として参考にして頂ければと思います。

では、本題に入ります。

まず、法人税率から確認しましょう。法人税率は次のとおりで、所得800万円を境に税率が変わります。

所得金額法人税率
800万円以下15%
800万円超23.2%

続いて、所得税率は次のとおりです。所得税率は累進税率となっており、所得が増えるほど税率が高くなります。

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円
(引用:国税庁「所得税の税率」)

法人税及び所得税の税率表を基に、各所得金額区分で税金がいくらになるか次表にまとめました。

所得金額法人税所得税有利
600万円90万円77万円個人
690万円103万円95万年個人
800万円120万円120万円=
890万円140万円141万円=
900万円143万円143万円=
1,000万円166万円176万円法人
2,000万円398万円520万円法人
*:簡便的な計算のため1万円未満は切り捨てています。

上記表から、所得金額が800万円を超えたあたりから法人税額及び所得税額がほぼ同額となり、所得が1千万円を超えると法人成りした方が有利なことがわかります

税率の比較を基に試算すると所得が800万円超あたりで法人成りを検討すべきことがわかりました。

ただし、冒頭でもお伝えしたとおり、法人成りを検討する際は他の要素も含めて検討する必要があります。また、実際に法人成りをしようとするとある程度の時間を要します。

そのため、所得が700万円を超えたあたりで、早めに法人成りの検討を始めことをおすすめします。

・仮想通貨の所得金額が700万円超となったら法人成りを検討する

仮想通貨の節税 法人化のメリット

続いて、仮想通貨の節税目的で法人化するメリットについて解説していきます。

法人税率と所得税率

法人税の最大税率は23.2%です。一方で、所得税は累進税率となっており最大税率は45%になります。

最大税率で考えた場合、法人は個人の約半分の税率に抑えることができます。

法人も個人も所得によって税率が異なること、住民税等他の税金も考慮する必要があるため一概には言えませんが、仮想通貨で大きな利益がでる場合には法人税の方が税金を安く済ませることができるでしょう。

損益通算

法人の場合、全ての事業から生じた損益を通算して最終的な利益を算定します。

仮想通貨で損失が生じた場合に、他の事業で生じた利益と損益通算が可能です。反対に仮想通貨で利益が出ていれば、他の事業で生じた損失と損益通算することも可能です。

一方で、個人の場合には仮想通貨の損益通算ができません。仮想通貨で損失がでても、株式や投資信託で生じた利益と損益通算ができないのです。

補足ですが、仮想通貨同士の損益通算は可能です。個人の方の仮想通貨の税金の取り扱いに関しては、次の記事で詳しく解説しています。

仮想通貨を年またぎで売却する際の税金【税理士が簡単解説】
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他事業の所得と損益通算ができる法人の方が、損益通算の観点からは有利と言えます

損失の繰越

法人の場合には、欠損金を10年間繰り越すことができます

個人の場合には、仮想通貨により生じた欠損金の繰越ができません

仮想通貨は値動きが激しく、一時的に欠損金額が生じることが考えられます。この欠損金額を将来生じることが期待される仮想通貨の売却利益と損益通算できるのは大きなメリットです。

仮想通貨の節税 法人化のデメリット

続いて、仮想通貨の節税目的で法人化することのデメリットを解説します。

設立費用がかかる

株式会社を設立する場合、設立費用として25~30万円程かかるといわれています

費用の内訳としては定款認証手数料、収入印紙代、設立登記費用等が挙げられます。

また、株式会社の場合資本金額も用意が必要がです。現在は、資本金を1円とすることもできますがそれでは事業が回らないでしょう。

資本金額は外部の方への会社の信用力にもつながりますので、最低100万円程は用意したいところです。

会社の維持費もかかる

法人の場合、均等割という税金を毎年最低7万円程納める必要があります

均等割は赤字でも納める必要があり、会社の資本金額や従業員数に応じて均等割額が増額します。

社会保険料もかかる

会社として従業員を雇い始めると、従業員の社会保険料を負担する必要があります

従業員が1名でもいれば社会保険への加入が必要で、従業員の社会保険料の半額を負担する必要があります。

含み益課税がある

個人の場合にはありませんが、法人は仮想通貨の含み益課税があります

売却等しなくても、保有している仮想通貨に含み益が生じていればその含み益にも税金が課されるということです。仮想通貨の含み益課税については次の記事で詳しく解説しています。

【知らないと恐い】法人と個人の仮想通貨含み益課税の違い
個人の場合には、仮想通貨の含み益課税がありません。一方で、法人の場合には仮想通貨の含み益課税がありますが、仮想通貨の節税メリットも大きいです。

儲けは法人の財産

法人として仮想通貨で利益を出した場合、その儲けは法人の財産であり個人の財産にはなりません

法人で利益がでたからといって、法人口座から個人口座に自由にお金を移すことは税務上認めらず、役員報酬等の形で給与として個人に還元することになります。

ただし、給与をもらった場合には所得税が発生しますよ。

税理士に相談しよう

法人化を検討する際は、税理士に相談することをおすすめします。

冒頭でも説明しましたが、法人化を検討する際は今回検討した法人税及び所得税率だけではなく、住民税等の他の税金、個人の所得状況等も考慮して判断する必要があります。

これら全てを個人で試算するのは難しいでしょう。

顧問税理士がいないという方は、「税理士ドットコム」というサイトで無料で税理士を紹介してくれます。仮想通貨で大きく利益が出そうな方は早めに相談するようにしましょう。

まとめ

今回は、仮想通貨の節税を目的として法人成りを検討する際の所得金額の目安について解説しました。

所得金額700万円が、法人成りの一つの目安金額となります

法人化することで税率面や損益通算、損失の繰越といった点で税制上のメリットを受けることができます。

一方で、法人化すると設立費用や維持費がかかる等のデメリットもあります。

法人化のメリット・デメリットを考慮しつつ、仮想通貨による所得が700万円を超えたら税理士と相談しながら法人化を検討するようにしてください。

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