・テナントの内装工事は費用計上できる?
・資産計上する場合の耐用年数は?
こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回はこんな疑問にお答えしていきます。
結論からお伝えすると、内装工事は基本的に資産計上で処理することになります。
資産計上にあたっては耐用年数の検討が必要になりますが、賃貸物件への内装工事か自社の建物に対する内装工事かによって耐用年数の考え方が変わりますので解説していきます。
テナントの内装工事費は費用計上?
テナントの内装工事費は、費用計上ではなく資産計上を行います。
内装工事は金額が高額になりやすく、使用する期間も1年以上と考えられるので原則は資産計上が必要です。
ただし、金額が僅少で取得価額が10万円未満ということであれば費用計上も可能です。
テナントの内装工事の耐用年数
では、資産計上をする場合の耐用年数について確認しましょう。
テナントのように他人の建物に内装工事をした場合の耐用年数は、次の3パターンに分けて考えます。
➀原則:内装工事を一つの資産と捉え合理的に見積もった耐用年数
②建物附属設備への内部造作:建物附属設備の耐用年数
③賃借期間の定めがあり一定の要件を満たす:賃借期間が耐用年数
それぞれ解説していきます。
耐用年数を合理的に見積もる
賃借建物に内装工事をした場合は、その内装工事を一の資産として、その内装工事をした建物の耐用年数・工事の種類・用途・使用材質等を勘案して合理的に耐用年数を見積もります。
耐用年数を見積もる場合は、その造作の種類別に見積もるのではなく、その造作全てを一の資産として総合的に見積もることがポイントです。
そのため、同一の建物に対して複数回にわたって内装工事が行われる場合も、その複数回の内装工事全てを一の資産として見積る必要があります。2回目以降の内装工事によって施された造作は、初回の造作とまとめて、耐用年数の見積りをやり直す必要があるということです。
見積り方法の定めはありませんが、例えば次のような方法が考えられます。
➀内装工事をその種類や材質等毎に区分
②上記区分毎に、過去の実績や法定耐用年数を基に個別使用年数を決める
③区分毎に年償却額を算出(➀/②)する
④耐用年数を見積る(内装工事の合計取得価額/③の合計額)
ただ、材質等毎の区分には建築関係の専門的知識が必要であったり、見積もり作業自体が煩雑であるため、簡便的に耐用年数を10~20年で処理する方もいたりします。
賃貸建物への内部造作の見積もり計算に関しては、「減価償却 実務問答集」という書籍がわかりやすくおすすめです。
実務必携の本ですので、まだ持っていないという方は手元に一冊おいておきましょう。
建物附属設備への内装工事
電気設備や給排水設備等の「建物附属設備」に対して内装工事をした場合は、建物附属設備の法定耐用年数がそのまま内装工事の耐用年数となります。
この場合、耐用年数の見積もりは必要ありません。
また、内装工事が「建物附属設備」の「店用簡易舗装」に該当する場合には、法定耐用年数の3年が耐用年数となります。この場合も耐用年数の見積もりは不要です。
「店舗用簡易舗装」とは、次のようなもので、短期間(おおむね3年)に取り替えが見込まれるものが該当します。
➀小売店舗等に取り付けられる装飾を兼ねた造作(例えば、ルーバー、壁板等)
②陳列棚(器具及び備品に該当するものを除く。)
③カウンター(比較的容易に取替えのできるものに限り、単に床の上に置いたものを除く。)
別表第1の「建物附属設備」に掲げる「店用簡易装備」とは、主として小売店舗等に取り付けられる装飾を兼ねた造作(例えば、ルーバー、壁板等)、陳列棚(器具及び備品に該当するものを除く。)及びカウンター(比較的容易に取替えのできるものに限り、単に床の上に置いたものを除く。)等で短期間(おおむね別表第1の「店用簡易装備」に係る法定耐用年数の期間)内に取替えが見込まれるものをいう。
耐用年数の適用等に関する取扱通達 2-2-6 店用簡易装備
賃借期間の定めがあり一定の要件を満たす
賃借期間の定めがあり一定の要件を満たす場合は、賃借期間が耐用年数となります。
一定の要件とは、次の全ての要件を満たす場合をいいます。
a.賃借期間の更新ができない
b.内装工事の請求又は買取請求ができない
解説はしましたが、賃借期間の更新ができない契約というのは実務ではあまりありません。賃借期間を耐用年数とできるものは限定的と覚えておきましょう。
他人の建物に対する造作については、次の通達が参考になります。
法人が建物を賃借し自己の用に供するため造作した場合(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)の造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却する。ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができる。
(注)同一の建物(1の区画ごとに用途を異にしている場合には、同一の用途に属する部分)についてした造作は、その全てを一の資産として償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積ることに留意する。
耐用年数の適用等に関する取扱通達 1-1-3 他人の建物に対する造作の耐用年数
自社の建物への内装工事の耐用年数
ここまで、他人の建物に対する内装工事の耐用年数の取り扱いを確認しました。
ここからは、自社所有の建物に内装工事をした場合の耐用年数の考え方を解説します。賃貸建物のように耐用年数の見積もりは必要ありませんよ。
建物
自社で有する建物に内装工事をした場合は、その造作をした建物が「建物附属設備」である場合を除き、建物本体の耐用年数が内装工事の耐用年数となります。
内装工事はあくまでも建物の一部という考え方ですね。
よって、建物完成後に新たに内装工事をした場合でも、内装工事はその建物本体の耐用年数で償却します。
建物本体の骨格と内装工事の構造が異なる場合でも、建物本体の耐用年数が内装工事の耐用年数になりますので注意してください。
建物本体の構造は「鉄骨」、内装工事は「木造」であっても建物本体の「鉄骨」の耐用年数が適用されます。
また、内装工事はその全てを一つの資産として償却しますので(建物附属設備を除く)、内装工事を一つ一つ分けて耐用年数の検討をする必要はありません。
全て建物本体の耐用年数で償却しましょう。
建物の内部に施設された造作については、その造作が建物附属設備に該当する場合を除き、その造作の構造が当該建物の骨格の構造と異なっている場合においても、それを区分しないで当該建物に含めて当該建物の耐用年数を適用する。したがって、例えば、旅館等の鉄筋コンクリート造の建物について、その内部を和風の様式とするため特に木造の内部造作を施設した場合においても、当該内部造作物を建物から分離して、木造建物の耐用年数を適用することはできず、また、工場建物について、温湿度の調整制御、無菌又は無じん空気の汚濁防止、防音、遮光、放射線防御等のために特に内部造作物を施設した場合には、当該内部造作物が機械装置とその効用を一にするとみられるときであっても、当該内部造作物は建物に含めることに留意する。
耐用年数の適用等に関する取扱通達 1-2-3 建物の内部造作物
建物附属設備
自社の建物に行った内部造作が「建物附属設備」に該当する場合は、通常の資産の取得と同様に建物附属設備の耐用年数をそのまま適用します。
建物附属設備に該当する内装工事としては、可動間仕切り等の設置工事などが考えられます。
テナントの内装工事負担金
テナントに入っていると、ビル全体の内装工事の負担金を請求される場合があります。この負担金の処理も賃貸建物への内装工事の耐用年数の考え方を基に考えればいいんですか。
所有権が自社ではなくビルオーナーになる場合は、固定資産ではなく繰延資産の処理になりますよ。
テナントに入っているビルのオーナーが行う工事で、内装工事負担金としてテナントが負担する場合があります。
このような内装工事負担金は「繰延資産」の耐用年数5年で処理します。
店舗スペースを賃借するための権利金と考えられ、法人税基本通達8-2-3の「 (3) (1)及び(2)以外の権利金等の場合」に該当するため耐用年数5年となります。
賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間を耐用年数とすることができます。
まとめ
今回は、内装工事の処理について確認しました。
内装工事費用は金額が大きくなることが多く、基本的には費用処理ではなく資産計上することになります。
また、資産計上をする際の耐用年数は賃貸建物または自社の建物への内装工事かで耐用年数の考え方が異なりますので注意してください。
内装工事の費用
・原則は資産計上
・賃貸建物への内装工事は耐用年数の見積もりが必要
・自社建物への内装工事は建物本体の法定耐用年数が耐用年数となる
コメント