【徹底解説】決算確定日前の確定申告書の提出は有効か?

決算確定日前の確定申告書の提出 税金

決算確定日前に申告書を提出していいの?
・決算確定日は何日にすればいいの?

こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回は、こんな疑問にお答えします。

■この記事を書いた人
・20代税理士
・世界4大税理士法人勤務
・税金やお金に係るお得な情報を発信

決算確定日前の確定申告書の提出は有効

結論からお伝えすると、決算確定日前の確定申告書の提出は有効と考えます。

順番に説明していきますね。
原則として、確定申告書は決算月から2月以内に提出する必要があります。

「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。(以下省略)」法人税法74条1項

ここでいう「確定した決算に基づき」とはなんでしょう?下記、金子先生の著書である租税法 [ 金子 宏 ]に参考となる記載がありましたので引用させて頂きます。

定時株主総会による計算書類の承認(会社438条2項)又は定時株主総会に提出された計算書類の取締役による内容の報告(会社法439条)を指す。出典:租税法p956

確定した決算とは定時株主総会等で決算書書類の承認を受けることを指します。つまり、法人は決算月から2月以内に株主総会等で承認を受けた決算書類を提出する必要があるということです。

しかし、実態として中小企業者の多くはそもそも定時株主総会を開催していないことが多いです。小さい会社では株主=社長ということが多々あり、改めて総会を開く必要性がないんですね。この場合、決算確定日には仮の日付を記載しますが、その日付とは関係なく仮の日付よりも前に申告書を提出することも多々あります。

では、決算確定日前に提出した申告書は無効なのでしょうか?参考になる裁判例があったので引用します。

中小企業の多くが株主総会の承認を経ることなく申告がされていることが実情であり、このような実情の下では、株主総会等の承認を確定申告の効力要件とすることは実態に即応せず、承認を経ていないからといってその確定申告が無効と解するのは相当ではない。

平成19年の福岡高等裁判所の判決ですが、「株主総会等の承認を得ていなくても法人税の確定申告書は有効」とされました。

まあ、それはそうですよね。実情として、中小企業者の多くが株主総会の承認を経ていない状況であり、全企業にこの承認を求めるのは困難でしょう。

つまり、確定申告書を決算確定日前に提出したとして、それが理由で申告書が無効とされることはないと考えられます。

決算確定日前に提出する際の注意点

決算確定日前の確定申告書の提出は有効と書きましたが、万が一ということもあります。

決算確定日前に提出する場合には、企業と税理士でコミュニケーションをとり、万が一申告書が無効とされた時に「損害賠償の請求はしませんよ」という事前の同意を得ておくことが大事です。必要であれば誓約書等を書いて頂くのもいいでしょう。

原則はあくまで、確定した決算に基づいた申告書の提出ですからね。

取締役会の承認でもok

決算の承認を受けるのは定時株主総会だけではなく、取締役会で承認を得る方法も認められています。下記参考となる税務通信の記事を引用させて頂きます。

会社法上、定時株主総会での決算の確定の承認を経ることなく、“取締役会の承認”により決算を確定させることもできる( 会社法439 等)。法人税に係る申告期限の1か月延長特例の適用を受けている場合でも、取締役会の承認により決算を確定させているのであれば、定時株主総会開催  に法人税の申告書を提出しても問題ないという。参照税務通信3706号:取締役会での決算確定と申告時期」

取締役会で承認を得て定時株主総会に申告書を提出する場合には、決算確定日欄には取締役会で承認を得た日を記載しましょう。

申告期限を延長している場合

法人税や消費税等の申告期限は、1月延長することができます。決算月から2月以内ではなく、3月以内までに提出期限を延ばせるということです。

第74条第1項(確定申告)の規定による申告書を提出すべき内国法人が、定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この条において「定款等」という。)の定めにより、又は当該内国法人に特別の事情があることにより、当該事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から2月以内に当該各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、納税地の所轄税務署長は、当該内国法人の申請に基づき、当該事業年度以後の各事業年度(残余財産の確定の日の属する事業年度を除く。以下この項及び次項において同じ。)の当該申告書の提出期限を1月間(次の各号に掲げる場合に該当する場合には、当該各号に定める期間)延長することができる。法人税法75条の2:確定申告書の提出期限の延長の特例

前章で引用した税務通信の記事にも記載されていますが、申告期限の1か月延長特例の適用を受けていても、取締役会の承認により決算を確定させているのであれば、定時株主総会開催に申告書を提出しても問題ありません。上記特例を適用しているからといって、定時株主総会後の提出が強制されるわけではないということです。

提出期限の延長に関してはこちらの記事「【申告期限の延長の特例】法人税・消費税・地方税の申告期限延長方法」で詳しく解説しています。

決算確定日の記載方法

別表1に記載する

決算確定日は、別表1の右下に記載箇所があります。こちらに記載しましょう。
別表1

上図の赤枠を拡大したものが下記図です。

別表1_決算確定日

決算確定日に記載する日

決算確定日は、定時株主総会の開催日を記載します。定時株主総会ではなく取締役会で承認を得た場合には、取締役会で承認を受けた日を記載します。

うちは小さい会社だから、定時株主総会なんて開催しないよ。

定時株主総会等を開催しない中小企業者であれば、決算確定日には仮の日付を記載することになるでしょう。定時株主総会を開催していないからといって、決算確定日を空欄で提出するのはやめましょう。原則はあくまで、「確定した決算に基づいた確定申告書」の提出が求められていますからね。この点は勘違いしないようにしてください。

また、定時株主総会等を開催せずに仮の日付を記載する場合、休日ではなく平日を記載しましょう。定時株主総会は基本的に平日に開催されると考えらえますので。

まとめ

今回は、下記2点に関して解説しました。
・決算確定日前の確定申告書の提出は有効と考えられる
・決算確定日の書き方

原則としては、決算確定日後に確定申告書を提出すべきです。しかし、実態として中小企業の多くは株主総会を経ることなく申告書を提出していることが多々あります。全ての企業に株主総会の承認を経てからの申告を課すことは難しく、決算確定日前の提出だからと言って申告が無効とされることはないと考えられます。

作業スケジュールの関係で、決算確定日前に申告をしたいケースもあるでしょう。会社と税理士でコミュニケーションをとり、同意を得られるようであれば決算確定日前の提出もありと考えます。

次の記事では、税理士の探し方について解説しています。

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