・法人税の申告期限を延長できると聞いたけど、手続方法を教えてほしい。
・延長申請書の書き方がわからない
・地方税や消費税も申告期限を延長できるの?
こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回は、こんな疑問にお答えします。
申告期限を延長する方法は3種類ありますが、今回は「申告期限の延長の特例」という定時株主総会が2カ月以内に開催されない場合に適用できる方法について解説します。
本記事でわかることは次のとおりです。
・申請書の書き方(画像付きで解説)
・定時株主総会が2カ月以内に開催される会社でも延長する方法
・消費税・地方税の延長方法
・申告期限を延長しても納期限は延長されない
それでは、さっそく確認していきましょう。
■この記事を書いた人
・20代税理士
・世界4大税理士法人勤務
・税金やお金に係るお得な情報を発信
申告期限の延長の特例とは?
法人税・地方税・消費税の申告期限は、「各事業年度終了の日の翌日から2月以内」です。しかし、定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から2月以内に定時総会が招集されない常況にある場合には、申告書の提出期限を1月間延長することができます。
3月決算の法人であれば、本来5月が申告期限ですが延長すると6月が申告期限になります。
法人税の申告期限延長申請書
「定款等の定めによる申告期限の延長の特例の申請書」を提出することで申告期限を延長することができます。国税庁のサイトはこちら「国税庁:[手続名]定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」です。
申告期限の延長の特例申請書の提出期限
申請書の延長特例申請書の提出期限は、最初に延長の適用を受けようとする事業年度終了の日です。3月決算法人であれば、3月31日が提出期限となります。
注意!納付期限は2月以内
申告期限の延長をしても、納付期限は延長されませんので注意してください。
申告書の提出期限が3か月以内となっても、納付は2か月以内にする必要があります。2か月以内に納付しないと追加で利子税の支払が発生しますので注意しましょう。
延長できる税目と根拠条文
申告期限の延長の特例は、法人税だけではなく地方税・消費税も1月間延長可能です。根拠条文はそれぞれ下記となります。
税目 | 根拠条文 |
法人税 | 法人税法75条の2第1項 |
地方税 | 地方税法72条の25 |
消費税 | 消費税法45条の2第1項 |
一つ注意して頂きたいのが、地方税・消費税は法人税の申告期限が延長されていることが前提です。
まず法人税の申告期限を延長し、その後、地方税・消費税の申告期限の延長申請書を提出しましょう。
「申告期限の延長の特例の申請書」の書き方
「定款等の定めによる申告期限の延長の特例の申請書」の書き方について解説します。記載方法を迷いそうな箇所を中心に図解付きで説明していきますね。
「申告期限延長期間」欄
・「申告期限を1月延長したい場合」に✓
「延長理由」欄
・申告期限 延長理由欄:「定款等の定めにより各事業年度終了の日から3カ月以内に定時株主総会を開催することとしているため」等の理由を記載します
「根拠条文」及び「添付資料」欄
・根拠条文欄:図解箇所に✓
・添付書類等欄:定款等の写しに〇
定款は添付書類です。申請書に定款を添付して税務署に提出してください。
一度申請すれば、取りやめの届出をださない限り翌期以降も継続して延長されますので、「申告期限の延長の特例の申請書」を毎年提出する必要はありませんよ。
消費税申告期限延長届出書 書き方
続いて、「消費税申告期限延長届出書」の書き方を解説します。国税庁のサイトはこちら「国税庁:[手続名]消費税申告期限延長届出手続」です。
「適用要件等の確認」欄
・「法人税法第75条の2に規定する申請書の提出有無」に〇
*消費税の申告期限の延長は、法人税の申告期限が延長されていることが前提となります。
・「国、地方公共団体に準ずる法人の申告期限の特例の適用を受けていない」に✓
消費税の届出書はシンプルで、その他は会社の基本情報や延長の適用を受けたい課税期間等を記載して頂ければokです。
地方税の申告期限延長届出書 書き方
地方税ですが、都道府県によって若干様式が異なります。今回は東京都の届出書を例として解説させて頂きます。東京都の申告期限延長届出書はこちら「申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認等の申請書」です。
「法人税に係る~処分等の届出」欄
・「下記のとおり延長の処分があった」に✓
・「確定申告書の提出期限の延長期間」に「1」と記載
「事業税等に係る~承認等の申請」欄
・「1:申告書の提出期限の延長をしたい場合 1月間」に✓
・「2:2月以内に定時総会が招集されない理由」は法人税の申請書と同じ理由を記載します
・「3:根拠条文」は「地方税法第72条の25第3項又は5項」に✓
・「4:添付書類等」は「定款等の写し」と「その他」に✓し、「その他」の()には「申告期限の延長の特例の申請書(写)」と記載します
「定款の写し」及び法人税の「申告期限の延長の特例の申請書の控」の2点を添付して申請書を提出してください。
定時総会が2月以内に開催される法人の延長方法と延長するメリット
申告期限延長の特例は、定時株主総会が2カ月以内に開催される法人は適用できません。
しかし、定款の記載を「定時株主総会は各事業年度終了の日から3カ月以内に開催する」と変更すれば適用することができます。
延長することでメリットはありますが、基本的にデメリットはありません。まだ延長していない法人は延長しておくことをオススメします。
うちは小さい会社だから2カ月あれば申告できるよ。
延長しなくてもいいんじゃない?
2カ月以内に申告できる会社でも延長をオススメしています。
延長するメリットを解説しますね。
申告期限を延長しておくメリット
メリット1:期限後申告を回避できる
申告期限後に申告書を提出することを「期限後申告」といいます。
期限後申告が続くと青色申告が取り消される等の罰則を受ける可能性があります。
通常は2カ月以内に申告が間に合う会社でも、決算間際に経理の方が病気になった等のアクシデントが発生し、申告期限に間に合わなくなる可能性がゼロとはいえません。
また、税制の中には「当初申告要件」という要件があるものがあります。
最初の申告時に税制の適用を受けるために必要な要件が満たされていない場合、その税制が適用できなくなります。後から不備に気が付いて更生の請求をしても、時すでに遅しで当該税制を適用することはできません。
申告期限を延長しておけば、2カ月の時点では忘れていても3カ月以内に気が付けば訂正できる可能性があります。
延長をしたとしても2カ月以内に申告することも可能ですし、保険としてとりあえず延長しておくことをオススメします。
メリット2:延滞税ではなく利子税で済む
・延長をしている場合:「利子税」が課される
➀利子税は延滞税よりも税率が低い
②延滞税は損金不算入だが利子税は損金算入が可能
定時株主総会が2カ月以内に開催される法人の延長方法
延長するメリットはわかりました。でも、うちの定款は「2カ月以内」になっています。変更するのも面倒なので、定款は2カ月のまま申請してもいいですか?
過去に定款が「2カ月以内」のまま申請した方がいましたが、それが理由で申請が却下された事例があります。定款は添付書類ですし、必ず3カ月以内に変更してから申請してください。
定款の変更は、定時株主総会又は臨時株主総会で決議する必要があります。期の途中で申告期限を延長することを決めたものの次回の定時株主総会まで待てない場合は、臨時株主総会を開催して変更の決議を行いましょう。
臨時株主総会を開催する場合には、基本的に2週間前までに招集通知の発送が必要です。決算間際で急遽延長を決めた場合は、日程を考えて早めに動くようにしましょう。
提出期限は事業年度終了の日までですよ。
他の申告期限延長方法と根拠条文
申告期限の延長の規定は、「申告期限延長の特例」以外にも2種類あり、全部で3種類の延長方法があります。
種類 | 延長理由 | 法人の申請 | 根拠条文 |
災害等による期限の延長 | 災害等により申告期限までに申告ができない場合 | 不要(個別指定の場合は必要) | 国税通則法11条 |
申告期限の延長 | 災害等により決算が確定しないため申告期限までに申告ができない場合 | 必要 | 法75条の1 |
申告期限の延長の特例 | 定款等の定めにより2カ月以内に定時株主総会が開催できない場合等 | 必要 | 法75条の2第1項 |
当記事では、3つ目の「申告期限の延長の特例」に関して解説しています。
「申告期限の延長の特例」以外の2つは、災害等がありやむを得ず提出できない場合に延長できます。これらの延長方法は、また別の記事で解説したいと思います。
まとめ
今回の記事の内容は下記のとおりです。
・申告期限の延長をしておくことがオススメ
・定款の記載を変更することでどの法人でも申告期限の延長が可能
・消費税及び地方税も申告期限の延長が可能
今回は申告期限の延長について書きましたが、下記記事では「決算確定日前の確定申告書の提出は有効か?」について解説しています。実務でよくある話かと思いますので、よろしければこちらも参考にしてみてください。
また、次の記事では税理士の探し方について解説しています。
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