振込手数料が先方負担の仕訳|3つの処理と消費税

振込手数料が先方負担の仕訳と3つの処理 法人向け

振込手数料を引かれて入金された。仕訳はどうする?
先方負担の手数料は、消費税でどう扱う?
差し引いて支払う側は、何に気をつける?

こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回はこんな疑問にお答えしていきます。

結論からお伝えすると、受け取る側は、差し引かれた振込手数料を「売上値引き」で処理するのがいちばん手間の少ない方法です。

1万円未満の値引きなら、相手に書類を渡す必要も、相手から書類をもらう必要もありません。

この記事では、国税庁のインボイスQ&A(2026年4月改訂)と、2026年1月に始まった取適法をもとに、受け取る側・支払う側それぞれの仕訳を解説します。

□この記事でわかること
・受け取る側の3つの処理と仕訳
・差し引いて支払う側の仕訳
・消費税で迷いやすい3つのポイント
・取適法で差し引きが禁止の取引

この記事を書いた人

・AIに強い現役税理士
・世界4大税理士法人での勤務経験あり
・法人成りと会社の税金をわかりやすく発信中

振込手数料が先方負担のときの仕訳(受け取る側)

振込手数料は、本来は支払う側が負担するものです。民法では、取り決めがなければ、支払いにかかる費用は支払う側の負担とされています。

参照:民法第485条

ただ実際には、取引先との取り決めで受け取る側が手数料を負担し、請求額から差し引いて振り込まれることがあります。これが「先方負担」です。

ここでは、次の例で仕訳を見ていきます。

  • 請求額:10,000円(税込み)
  • 差し引かれた振込手数料:440円
  • 入金額:9,560円

差し引かれた440円の処理は、国税庁のインボイスQ&Aで3つに分けられています。

処理1:売上値引きにする

借方貸方
普通預金 9,560
売上値引高 440
売掛金 10,000

差し引かれた440円を、売上げの値引きとして処理する方法です。会計ソフトに「売上値引高」の科目がなければ、売上高のマイナスで入力します。

値引きをしたときは、本来は相手に「返還インボイス」を渡します。返還インボイスとは、値引きや返品の金額を書いて相手に渡す書類です。

ただし、税込み1万円未満の値引きなら、返還インボイスは渡さなくてかまいません。振込手数料はふつう1万円未満なので、書類のやりとりなしで済みます。

この免除は、国税庁の「少額な返還インボイスの交付義務免除の概要」で確認できます。期限や対象者の制限はありません。

参照:消費税法第57条の4第3項、消費税法施行令第70条の9第3項第2号

処理2:支払手数料にする

借方貸方
普通預金 9,560
支払手数料 440
売掛金 10,000

440円を、相手(買手)から「支払方法の便宜」というサービスを受けた代金として処理する方法です。

この場合、消費税の控除を受けるには、買手が発行したインボイスか、自分で作って買手に確認してもらった仕入明細書が必要です。

なお、2年前の課税売上高が1億円以下などの事業者は、1万円未満の支払いならインボイスがなくても帳簿だけで控除できます。

これを少額特例といい、2029年9月30日までの取引が対象です。

参照:少額特例は国税庁「インボイスQ&A 問111」(平成28年改正法附則第53条の2)、仕入明細書は消費税法第30条第9項第3号

帳簿に書くことは、「仕訳に取引先は必要?摘要欄に書く3つのこと」で解説しています。

処理3:立替金として精算する

買手が、売手のかわりに銀行へ振込手数料を立て替えて支払った、と考える方法です。仕訳は処理2と同じく、支払手数料で入力します。

この場合は、銀行が発行したインボイスと、買手が作った立替金精算書が必要です。差し引かれた金額が、実際の振込手数料と同じであることも条件です。

買手がATMで振り込んだ場合は、この2つの書類がなくても、帳簿だけで控除できます。ただし、ATMで振り込んだことを買手に確かめておく必要があります。

3つの処理を比べると、次のとおりです。

処理440円の科目消費税で
要るもの
売上値引き売上値引高不要
(1万円未満)
支払手数料支払手数料買手のインボイス
か仕入明細書
立替金支払手数料銀行のインボイス
+立替金精算書

書類のやりとりがいらない売上値引きが、いちばん手間の少ない処理です。

3つの処理は、国税庁の「インボイスQ&A 問29 売手が負担する振込手数料相当額」で確認できます。

もなたの弟子
もなたの弟子

ずっと支払手数料で入力してきました。今から売上値引きに変えても大丈夫ですか?

もなた
もなた

大丈夫です。科目は支払手数料のままで、消費税だけ売上値引きとして計上する方法も問題ありませんよ。

振込手数料を差し引いて支払う側の仕訳(買掛金)

次は、請求額から振込手数料を差し引いて支払う側(買手)の仕訳です。10,000円の請求に対して9,560円を振り込み、銀行に手数料440円を支払ったとします。

借方貸方
買掛金 10,000普通預金 10,000

口座からは、振込額9,560円と手数料440円の合計10,000円が出ていきます。手数料は相手の負担なので、自分の「支払手数料」にはしません。

通帳に振込額と手数料が2行で出る場合は、2行とも買掛金で消し込みます。

雑収入で処理するときの注意点

借方貸方
支払手数料 440普通預金 440
買掛金 10,000普通預金 9,560
雑収入 440

手数料をいったん自分の経費にして、差し引いた分を雑収入にする方法もあります。利益は同じですが、消費税の区分に注意が必要です。

支払手数料を課税仕入れにしたのに、雑収入を消費税の「対象外」にすると、手数料分の消費税を多く控除してしまいます。

雑収入を「対象外」にせず相手との取り決めに合う税区分にするか、上の1本の仕訳にまとめましょう。

また、相手が「支払手数料」で処理している場合は、インボイスの発行や、仕入明細書の確認を頼まれることがあります。

先方負担の振込手数料と消費税の3つのポイント

ポイント1:科目は支払手数料のまま、消費税だけ値引きにできる

会計の科目は支払手数料のままで、消費税の計算だけ「売上げの値引き」として扱うこともできます。今の入力ルールを変えたくない場合に便利です。

この場合、ふつうの支払手数料と区別できるようにしておく必要があります。たとえば「支払手数料(売上値引)」のような補助科目を作り、税区分を売上げの返還にします。

参照:国税庁「インボイスQ&A 問30」

ポイント2:軽減税率の売上げなら8%で値引き

売上値引きにするときの税率は、もとの売上げの税率に合わせます。食品など軽減税率(8%)の売上げなら、差し引かれた手数料も8%の値引きとして処理します。

「手数料だから10%」と入力しないよう注意しましょう。

ポイント3:簡易課税・2割特例なら売上値引きに

簡易課税や2割特例では、経費で支払った消費税は計算に使いません。支払手数料で処理しても、納める消費税は減りません。

一方、売上値引きにすれば、その分の売上げの消費税が減ります。金額は小さいですが、処理を決めるなら売上値引きがおすすめです。

2026年からの取適法と振込手数料の差し引き

2026年1月1日から、下請法が「取適法(中小受託取引適正化法)」に変わりました。

取適法の対象になる取引では、振込手数料を受注した側に負担させ、代金から差し引くことが禁止されています。相手と合意していても、代金の「減額」として違反になります。

下請法のころは、前もって書面で合意していれば、実際の手数料の範囲で差し引くことが認められていました。2026年からはこの扱いがなくなったので、注意が必要です。

参照:公正取引委員会「取適法の運用基準」第4の3(1)

取適法の対象になる取引

対象は、製造・修理の委託や、システム・デザインの作成、サービスの提供、運送の委託などです。商品をただ売り買いする取引は対象外です。

さらに、発注する側と受ける側の資本金や従業員数で決まります。

たとえば、資本金1,000万円以下の会社や個人事業主が、資本金1,000万円を超える会社から仕事を受ける場合は、対象になることがあります。

対象かどうかは、公正取引委員会の「取適法・振興法」のページで確認できます。

支払う側が対象なら、手数料は自分で負担

支払う側が取適法の対象なら、請求額を全額振り込み、手数料は自分で負担します。仕訳は次のとおりです。

借方貸方
買掛金 10,000普通預金 10,000
支払手数料 440普通預金 440

対象外の取引でも、立場の強い側が一方的に手数料を負担させると、独占禁止法の問題になることがあります。負担のしかたは、取引先と話し合って決めましょう。

振込手数料の先方負担のよくある質問

Q1
振込手数料を先方負担にするのは違法ですか?
A1

取適法の対象の取引では、合意があっても違反です。

対象外の取引なら、取引先と合意していれば差し引いてもかまいません。取り決めがなければ、手数料は支払う側の負担です。

Q2
差し引かれた額が、実際の振込手数料と違うときは?
A2

売上値引きで処理するなら、差し引かれた金額をそのまま値引きにします。

立替金として処理する方法は、実際の振込手数料と同じ金額であることが条件なので使えません。

Q3
振込手数料を雑収入で処理してもいいですか?
A3

支払う側が、手数料を支払手数料にして、差し引いた分を雑収入にする方法はあります。

ただ、雑収入を消費税の対象外にすると控除しすぎになるので、「買掛金/普通預金」の1本の仕訳がおすすめです。

Q4
免税事業者でも処理を分ける必要がありますか?
A4

免税事業者は消費税を納めないので、消費税の区分は気にしなくてかまいません。

売上値引きでも支払手数料でも利益は同じです。毎回同じ科目で処理しましょう。

Q5
毎回、手数料の差額を入力するのが面倒です
A5

会計ソフトの入金の消し込み機能や、自動で仕訳するルールで、差額を売上値引きにする設定を入れると手間が減ります。

取引先が多いなら、記帳を任せる方法もあります。

まとめ

振込手数料の先方負担のポイントをまとめます。

  • 受け取る側は売上値引きが手軽
  • 1万円未満なら返還インボイスは不要
  • 支払う側は手数料を経費にしない
  • 取適法の対象なら差し引きは禁止

※2026年10月時点の制度をもとにした、一般的な内容です。実際に判断するときは、顧問の税理士先生に確認してから進めてください。

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