仕訳に取引先は必要?摘要欄に書く3つのこと

仕訳に取引先は必要?摘要欄に書く3つのこと 法人向け

仕訳に取引先を書く必要はある?
摘要欄には何を書けばいい?
コンビニの店名まで書かないとだめ?

こんにちは。
税理士のもなた(@TaroZeikin15214)です。
今回はこんな疑問にお答えしていきます。

結論からお伝えすると、仕訳には取引先を書くのが決まりです。所得税・法人税の帳簿にも、消費税の仕入税額控除にも、相手の名前が必要です。

ただし、略称や屋号、取引先コードで書ける場合もあります。

この記事では、2026年10月時点の制度をもとに、取引先が必要な理由と書き方、摘要欄に書くことを解説します。摘要欄とは、仕訳の中身を説明する欄のことです。

□この記事でわかること
・仕訳に取引先が必要な理由
・取引先を書かないときのリスク
・略称・屋号・コードでの書き方
・摘要欄に書く3つのこと

この記事を書いた人

・AIに強い現役税理士
・世界4大税理士法人での勤務経験あり
・法人成りと会社の税金をわかりやすく発信中

仕訳に取引先が必要な2つの決まり

仕訳に取引先を書くのは、「書いたほうが親切」だからではありません。税金のルールで、帳簿に書くことが決まっているからです。

決まりは大きく2つあります。

決まり1:所得税・法人税の帳簿

青色申告の会社は、法人税法施行規則の別表二十四で、帳簿に書くことが決まっています。たとえば経費は「取引の年月日、支払先、事由及び金額」です。

仕入れなら仕入先、売上げなら売上先を書きます。個人事業主の青色申告も、同じように相手を書くことになっています。

白色申告の個人事業主も同じです。「売上先・仕入先その他の相手方の名称」を帳簿に書きます。

白色申告の帳簿は、国税庁の「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」で確認できます。

決まり2:消費税の仕入税額控除

仕入税額控除とは、売上げで預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引く仕組みです。

2023年10月からのインボイス制度では、この控除を受けるには、帳簿とインボイス(適格請求書)の両方を保存する必要があります。

帳簿には、次の4つを書きます。

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 取引の年月日
  • 取引の内容(軽減税率の対象ならその旨)
  • 支払った金額(税込み)

1つめが取引先です。帳簿の記載事項は、国税庁の「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」で確認できます。

インボイスの登録番号は、帳簿に書く決まりはありません。登録番号は、受け取ったインボイスで確かめます。

免税事業者など、インボイスを発行できない相手からの仕入れは、経過措置で消費税の一部を控除できます。2026年10月1日から2028年9月30日までの仕入れなら70%です。

この経過措置を使うときは、帳簿に経過措置の対象であること(「70%控除対象」など)も書きます。

また、基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者は、1万円未満(税込み)の仕入れなら、インボイスがなくても帳簿だけで控除できます。

これを少額特例といい、2029年9月30日までの仕入れが対象です。特定期間の課税売上高が5,000万円以下の場合も使えます。

参照:経過措置は国税庁「インボイスQ&A 問113-3」(平成28年改正法附則第52条・第53条)、少額特例は国税庁「No.6496」(同附則第53条の2)

なお、簡易課税や2割特例で消費税を計算している場合は、仕入税額控除のために帳簿を書く必要はありません。ただし、所得税・法人税の帳簿として取引先は書きます。

区分取引先何のため
青色申告書く帳簿の
決まり
白色申告書く帳簿の
決まり
消費税
原則課税
書く仕入税額
控除の要件
簡易課税・
2割特例
書く所得税・
法人税の帳簿

どの立場でも、取引先は書くものと覚えておきましょう。

取引先を書かない帳簿の3つのリスク

「取引先を書かなくても、領収書があれば大丈夫では?」と思うかもしれません。ですが、帳簿に書いていないと次のリスクがあります。

リスク1:消費税の控除が認められないおそれ

原則課税で消費税を計算している場合、帳簿の記載事項が足りないと、仕入税額控除が認められないおそれがあります。

控除が減れば、その分だけ納める消費税が増えます。

リスク2:青色申告の取消しの理由になる

帳簿の備付け・記録・保存が決まりどおりでないことは、青色申告の承認を取り消す理由の1つです(所得税法150条、法人税法127条)。

取引先が1件抜けただけですぐ取り消されるわけではありません。ただ、相手がわからない帳簿が続くのは避けましょう。

リスク3:税務調査で説明できない

税務調査では「この支払いは誰に、何のために?」と聞かれます。帳簿に相手が書いていないと、領収書を探したり、記憶をたどったりすることになります。

事業の経費だと説明できないものは、経費として認められないこともあります。

もなたの弟子
もなたの弟子

摘要を書くのって、税務署のためだけなんですか?

もなた
もなた

自分のためでもあります。取引先がわかれば、同じ請求の二重計上や、支払い漏れにも気づきやすくなりますよ。

取引先の書き方(略称・屋号・コード)

取引先は、正式な名前で書くのが原則です。個人なら「田中一郎」、会社なら「株式会社鈴木商店」のように書きます。

ただ、毎回フルネームで書くのは大変です。次の書き方も認められています。

略称:取引先の一覧があればOK

正式名称と略称を並べた取引先の一覧があれば、「鈴木商店」のような略称で書けます。相手がはっきりわかることが条件です。

参照:消費税法第30条第8項第1号イ、国税庁「No.6497」(相手方の氏名又は名称の記載)

屋号・店名:コンビニや飲食店

電話番号などで相手がわかるなら、「日比谷食堂」のような屋号や、「〇〇マート霞が関店」のような店名で書けます。

コンビニやスーパーは、レシートにある店名をそのまま書けば大丈夫です。

参照:消費税法第30条第8項第1号イ、国税庁「No.6497」(屋号による記載)

取引先コード:一覧表と一緒に保存

「A001」のような取引先コードで書くこともできます。コードと正式名称を対応させた一覧表は、帳簿と一緒に保存しておきましょう。

消費税の帳簿でコードを使えることは、国税庁の「消費税法基本通達 11-6-1」で確認できます。

3万円未満の電車代は「特例」も書く

3万円未満の電車・バス代は、請求書がなくても帳簿だけで仕入税額控除を受けられます。

この場合は、取引先に加えて「3万円未満の鉄道料金」のように、特例にあたることも書きます。

帳簿だけで控除を受けるときは相手の住所も書くのが原則ですが、電車・バス代は住所を書かなくてかまいません。

参照:消費税法施行令第49条第1項第1号イ・第70条の9第2項第1号、国税庁「インボイスQ&A 問110」

摘要欄に書く3つのこと

取引先をどこに書くか決まっていなければ、摘要欄に書きます。摘要欄には、次の3つを書くとわかりやすくなります。

  • 取引先(誰に支払ったか)
  • 内容(何を買ったか・何の代金か)
  • 目的(交際費なら相手と人数)

長い説明は要りません。「〇〇商事 商品仕入」くらいの短さで十分です。

勘定科目別の摘要の書き方

よく使う勘定科目で、摘要の例をまとめました。

勘定科目摘要の例
仕入高〇〇株式会社
商品仕入
消耗品費△△文具
コピー用紙
接待交際費□□亭 〇〇社と
会食 3名
外注費山田太郎
ロゴ制作
旅費交通費JR A駅→B駅
〇〇社訪問
通信費〇〇モバイル
10月分

会社の交際費は相手と人数も書く

会社の場合、1人あたり1万円以下の飲食代は、交際費から外せます(2024年4月から、5,000円以下→1万円以下に変わりました)。

そのためには、次のことを記録しておく必要があります。

  • 飲食した年月日
  • 参加した相手の会社名・氏名と関係
  • 参加した人数
  • 金額と、お店の名前・所在地

社内の人だけの飲食は対象外です。摘要に相手と人数まで書いておくと、決算のときに分けやすくなります。

参照:租税特別措置法第61条の4第6項第2号・第8項、同法施行令第37条の5第1項、同法施行規則第21条の18の4

会計ソフトの取引先欄と摘要欄の使い分け

会計ソフトには、摘要欄とは別に取引先を登録できるものが多くあります。主なソフトでの入れ方は次のとおりです。

ソフト取引先を
入れる所
ポイント
freee「取引先」タグ補助科目の
代わりに使う
マネー
フォワード
仕訳の「取引先」登録番号も
登録できる
欄がない
ソフト
摘要欄取引先と
内容を両方

freeeの「取引先」タグは、一般的な会計ソフトの補助科目の代わりに使う項目です。取引先ごとに集計できます。

マネーフォワード クラウド会計は、「取引先」画面に取引先と登録番号を登録しておき、仕訳を入力するときに選びます。

設定しておけば、インボイスの経過措置の控除額も自動で計算されます。

取引先を登録しておくと、帳簿に相手が残るうえ、取引先ごとの金額や未払いの残高も見られます。

使い分けは次のとおりです。

  • 取引先欄:誰に支払ったか
  • 摘要欄:何の代金か・目的

取引先欄に登録したなら、摘要に同じ名前を重ねて書かなくてもかまいません。仕訳帳を出力したときに取引先が表示されるか、一度確かめておくと安心です。

仕訳の取引先のよくある質問

Q1
取引先を書かないと違法ですか?
A1

帳簿の決まりを満たさないことになります。

すぐに罰則があるわけではありませんが、消費税の仕入税額控除が認められなかったり、青色申告の取消しの理由になったりします。

Q2
コンビニやスーパーも店名を書く必要がありますか?
A2

書きます。レシートにある「〇〇マート霞が関店」のような店名で大丈夫です。

Q3
交通費の摘要欄はどう書けばいいですか?
A3

「JR A駅→B駅 〇〇社訪問」のように、交通機関・区間・目的を書きます。

3万円未満の電車・バス代は、「3万円未満の鉄道料金」のように、特例にあたることも書いておきましょう。

Q4
摘要欄と備考欄の違いは何ですか?
A4

摘要欄は、取引先や内容など仕訳の中身を説明する欄です。備考欄は、社内向けの覚え書きに使う欄です。

取引先や内容は、摘要欄か取引先欄に書きましょう。

Q5
毎回同じ取引先を書くのが面倒です
A5

会計ソフトに取引先を登録し、銀行やカードの明細から自動で仕訳するルールを作ると、入力の手間が減ります。

それでも負担なら、記帳を任せる方法もあります。

まとめ

仕訳の取引先のポイントをまとめます。

  • 仕訳には取引先を書くのが決まり
  • 書かないと消費税の控除や青色申告に影響
  • 略称・屋号・取引先コードでも書ける
  • 摘要欄は「取引先+内容+目的」

※2026年10月時点の制度をもとにした、一般的な内容です。実際に判断するときは、顧問の税理士先生に確認してから進めてください。

取引先・摘要の入力が負担なら記帳代行も

取引先や摘要まで整った帳簿を毎月つけるのは、なかなか手間がかかります。本業が忙しい方は、記帳を任せるのも1つの方法です。

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